砂漠の小舟

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『砂漠の小舟』 
 丹生谷貴志 筑摩書房 1987


マルクスの「可能性の中心」はおそらく、《ゴルゴダ》を「インダス河」周辺の領域へ移動させたという点にあろう。(p139)

マルクスは奇妙な屈折によって、「歴史」が《始まり終る》輝かしい黙示の空間にではなく、あらかじめ「歴史」が不在であり、それ故に「歴史」が〈排除〉した〈外部〉へと出る。マルクスに於いて「歴史」はヘーゲル的な輝かしい終末へと開かれるのではなく、何かわからぬずれによって散逸してしまうのである。《一つの》肉体=モデルに回帰しようとはしないエコーとなって「歴史」は散逸する。(p140)