文化財のための保存科学入門

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『文化財のための保存科学入門』
 京都造形芸術大学編 角川書店 平成14

日本における保存科学の基礎は、明治時代の美術評論家・岡倉天心(1862-1913)に負うところが大きいとよくいわれる。日本美術品保存の重要性を説き、法隆寺金堂壁画の科学的な調査研究を提唱し、大修理に導いた功績からである。さらに、1898年(明治31)、天心は日本美術院を創設し、美術界で活躍したのだが、同時に仏像の修理分野にも貢献している。そのほか、東京帝国大学・瀧精一が創設した古美術保存協議会の活動もまた日本における保存科学発展の原動力となった。また、アメリカ人教授の指導によるものだが、天心の活動よりも早い1877年(明治10)、東京大学の学生による銅鐸の分析化学的な業績が報告されている。この種の研究は根強く続けられ、数々の研究成果が報告されており、やはり保存科学発展の礎となったのである。(p7)