奈良の地名由来辞典

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『奈良の地名由来辞典』
 池田末則編 東京堂出版 2008

村の名も法隆寺なり麦を蒔く  虚子

過去の歴史の検証を試みるとき、考古学では発掘調査によって、その痕跡を求めてきた。ところが、考古学という学問のなかった時代には、地表面に定着した地名が唯一の史料として重視されてきた。『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』などには数多くの地名が記録されている。たとえば、五世紀の人物画像鏡(和歌山県橋本市・隅田八幡宮所蔵)の「意柴沙加(おしさか)」の地名は、古墳時代以前から土地に固着し、しかも、現代生活の中に根強く生き続けてきた古語の化石なのである。あまりにも身近に利用し得るだけに、真の価値については水や空気と同じく、閑却される傾向が強いのである。(p1)