秘密の京都

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『秘密の京都―誰にも教えたくなかった事、物、場所
 自切俳人 経済界(リュウブックス・タツの本) 昭和54


意外なことかもしれないが、僕にとっての京都はとても自由である。もし、僕の京都観が正しければ、人びとは、私的な印象にもとづいて”遊び”にあふれた京都の本を心から要求しているに違いない。僕が京都で発見したのは、自分たちの平凡な日常生活を東山の上から高みの見物をしながら楽しもうとする、「京都人の精神(こころ)」なのである。それを京都人でない読者が、どう受けとめてくれるかは読まれてみるまでわからない。そのことが、この本では最後まで秘密になっている。ずいぶん前のことだが、僕はこんなことを考えたことがある。世に喜劇や悲劇はあるけれど、怒劇がない。観客を怒らせる芝居がないように、読者を怒らせる本というのはあり得ないのだろうかと。(p3-4)