月と太陽と魔女

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『月と太陽と魔女―ジェンダーによるアンデス世界の統合と支配
 アイリーン・シルバーブラット 染田秀藤訳 岩波書店 2001

 ジェンダー思想はまたヒエラルヒーの思想でもあった。つまり、ジェンダーによる思考法は地位を規定し、共同体内部の区分を序列化したので、インカ人がそのジェンダーの枠組みを利用して帝国の支配関係を構築したのは、なんら不思議ではない。彼らはその枠組みを利用して、まず被征服者を自分たちに繋ぐ「絆」、しかも、その繋がりが非対照的であることを示す「絆」を考案し、でっちあげた。政治的関係が親族関係に取って代わるにつれて、ジェンダーは権力を表し、統合する「あや」となった。そして、もはやメタファーどころか、次々と創り出される帝国の制度は女性に対する支配を人類一般に対する支配と融合させた。そのようにして、ジェンダーは階級関係を現実化させる一つの方式となり、階級形成によって、「ジェンダーの差異」は「ジェンダーのヒエラルヒー」へと変化したのである。(p15-6)