平均有銭

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 『平均有銭―中国の今昔
 内山完造 同文舘 昭30

 教育にしても偏向教育をしてはならん、中立の教育をするのであるともつともらしいことがよく云われるが、この中立ということは、堅横十文字に限界の解つて居る人でなければ解らないことだともいうことを知らないで、平気で中立教育という様なことを云つて居る。たつた一本の棒でもよい、両端がはつきりと見えて居れば中央が握れるが、一方の端でも見えなければ中央はつかめないのである。大学出の師はとにかく、師範学校出の教師は両端の教育を受けて居るなら、中央がつかめて中立の教育が出来るかも知らんが、万一にも教師自体が両端が解つて居らないならば決して中央を握ることは出来ないであろう。従つて中立教育は出来ないであろう。否なかえつて教師が一端より知らない場合にはその教育こそ偏向教育ではあるまいか。とにかく吾々は色々の言葉でごまかされ勝ちである様だ。イヤごまかすなどという悪意はないのだが、たゞ知らないだけなのである。(p243-4)