ドゥルーズとマルクス

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 『ドゥルーズとマルクス―近傍のコミュニズム
 松本潤一郎 みすず書房 2019


 マルクスがみずからの精神と身体を酷使して、この霊媒的とも形容しうる実験をおこなったのは、社会的諸関係の総体から剰余価値を生産する資本が真に社会の唯一の主体となった(資本の実質的包摂が完了-成就した)とき、資本が社会的諸関係の総体もろとも消滅するということを資本みずからの口から言わせるためだった。余剰を原動力とする資本主義を批判するにあたって、知もまた無駄遣い-空費された。それはいわば「何も言うことがない」ということを言うために意と労を尽くすこと、沈黙するために喋りつづけるという逆説にも似た自作自演であり、知の解体と解放だった。(p171)