アジアの多文化社会と国民国家

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『アジアの多文化社会と国民国家』
 西川長夫・山口幸二・渡辺公三編 人文書院 1998

アジアとは何か。私自身はアジアという言葉をなるべく使わないようにしているのですが、皆さんのお話を聴いて、それがいかに広大な地域であり、豊かな地域であるかを痛感しました。たとえば、インドネシアの西から東の間がアメリカの幅に対応するとか。そこには三〇〇の民族と二五〇の言語があるとか。多様な民族、多様な言語、多様な生活がある。そこに次々と征服者がやってきて、ヨーロッパからポルトガル人が来て、スペイン人が来て、オランダ人が来て、イギリス人が来て、アメリカ人が来て、日本人が来て、またアメリカ人が来てという歴史のなかで形成された多様性です。アジアとは何かを定義することはできないし、その必要もないと思いますが、広大な多様性の世界がそこにはある。そして今ここで何よりも強調したいのは、それは旧日本帝国の版図に収められていた地域であるということです。(p238-9)