戦時下の日本映画

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 『戦時下の日本映画―人々は国策映画を観たか
 古川隆久 吉川弘文館 2003


 一般的にいって、映画を観るにはそれなりに時間や手間やお金がかかる。だから、人は自分にとって観る価値がないと予想できる映画を時間や手間やお金をかけてまで観ようとはしない。基本的には映画館に行かなければ映画を観ることができなかった昭和戦中期の人々にとってはなおさらであった。当然映画製作会社や映画館は、できるだけ多くの人に観てもらい、できるだけ多くの収益を上げるために、映画の製作や上映に工夫を凝らすはずである。つまり、映画興業の動向の主導権は観客が握っているはずなのである。そうした中で国策映画ははたして人々にとって観る価値があったのだろうか。(p3)