地球は空地でいっぱい

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『地球は空地でいっぱい』
 アイザック・アシモフ 小尾芙佐・他訳 早川書房 昭和48


学者というものは、自由に揺れうごく好奇心に自由に従っていってこそ自由なのだと彼は言った。財布の紐をにぎっている権力者たちによってあらかじめお膳立てされた研究をありがたがっていては、卑屈になって、沈滞してしまうものだとも言った。なんびとも他人の知的興味をとやかくいう権利はないのだとも言った。フォスターはそれらを不信の念をもって聞いていた。耳新しいことではなかった。大学の学生たちは、教授連を動揺させるためによくこんなことを言うものだし、彼自身もそんなことを言っておもしろがっていた時代もあった。科学史を学んだ者なら、多くの人々がかつてはこう考えていたという事実を知っている。しかし、現代の科学者がこんなたわごとを言うとは、いちじるしく奇妙に、不自然にすらきこえた。(p22)