批評の政治学

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『批評の政治学―マルクス主義とポストモダン』
 テリー・イーグルトン 大橋洋一・鈴木聡・黒瀬
 恭子・道家英穂・岩崎徹訳 平凡社 1986


内面とは、私たちが〈他者〉の欲望を欲望した結果はじめて生じたものであることを私たちは思い知らされる。子どもはアレゴリストである。子どもは、行動そのものから剥離している意味だけをむやみやたらに追いかけているのだから。おとなは象徴主義者である。おとなは行動と意味を切り離すことができないのだから。素人俳優は政治的革命家に似た人間である。どちらも、約束事=社会制度に戸惑いつつそれを下手くそに演ずる=遂行することしかできないのだから。素人俳優も革命家も、子どものころの困惑から抜けきってはいないのである。 おそらくこの困惑こそ、私たちが「理論」と呼ぶものではないか。(p293)