都市の遊歩者

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 『都市の遊歩者―パサージュ論3
 ヴァルター・ベンヤミン 今村仁司・三島憲一他訳 岩波書店 1994

 イデオロギーとしての上部構造という学説について。マルクスは、ここでは上部構造と下部構造のあいだの因果関係だけを確認しようとしたにすぎないように、さしあたり思われる。だが、上部構造の一連のイデオロギーは諸関係を誤った歪んだ形で反映しているという発言からしてすでに、それ以上のことを示している。つまり、問題はこうである。下部構造が思考や経験の素材という点である程度上部構造を規定しているにしても、この規定が単純な反映といった規定ではないとすれば、いったいそれは―その規定の発生原因の問題をまったく度外視するとして―どのように特徴づけられるべきなのであろうか。下部構造の表現として特徴づけられるべきだ、というのがその答えである。上部構造は下部構造の表現なのである。社会を存在させている経済的諸条件は、上部構造のうちに表現される。(p14)