読書日記

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『読書日記』
 E.R.クルティウス 生松敬三訳 みすず書房 1973


もうやがて三〇年にもなるが、わたくしがバルザックについての本を書くとき、その同時代人によってかれがどう見られていたかという証言を集めていた。わたくしはゲーテの日記を手に入れたいと思っていた。周知のとおり、この日記を完全な形で収めているのはヴァイマル版しかなかった。そのテキストを手にすることは困難だった。ところが、一本のソーセージを買ったとき、それがほご紙にくるまれていたのだが、なんと、それはヴァイマル版の一ボーゲンで、まさに探し求めていたテキストを含んでいたのである。精神がひじょうに緊張しているときには、そのための努力をしなくても、求めるものが与えられる。(p6-7)