沖縄

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 『沖縄―辺境の時間と空間
 谷川健一 三一書房 1970


 日本の列島社会を単系列の時間ではかるほど不当なことはないにもかかわらず、日本ほどそれを無反省に濫用し、強行した国家も少なくない。日本人のこうした傾向は、ヨーロッパやアメリカの意識の尺度で日本をはかる態度に拍車をかけた。すなわち、日本人の意識はつねに「ポリ」ネシアのかわりに「モノ」ネシアが、また「ミクロ」ネシアのかわりに「マクロ」ネシアが存在したのである。モノカルチュアのマクロな世界とは、要するに大陸国家の特徴なのであるが、「ネシア」に育った日本人には、つねに大陸とか大国とかへのあこがれを捨てることができず、今日でもふっきれないでいる。この「モノ」や「マクロ」な意識の尺度は、多系列の時間と意識とが複合的に重層化している日本列島社会をはかるのに、最も実状にそぐわない方法なのだ。(p187)