美の味わい

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『美の味わい』
 エリック・ロメール 梅本洋一・武田潔訳
 勁草書房 1988


すべての芸術の内で、映画は最も現実主義的なものである。よろしい。しかし、この語の意味するところをよく理解しなければならない。それは、映画作家が事物そのものを扱い、それらに修正を加えることなく複製することを意味するのである。私はもはやモンタージュの驚異的な力を信じてはおらず、映像が世界から美を奪い取り、その美を身にまとうことをますます要求しているのである。(p51)

結局、文学は、その誕生以来、長い道のりを歩んできた。そして他の芸術より深い意味作用を一度に担ったいくつかの主題が発見される段階に立ち至っている。ペシミズム、不条理、「失敗」は我々近代人には貴重な理念である。しかし楽観主義は、たとえ書物において時代遅れであろうが、スクリーンの上を、最も濃密な意味作用で飾っているのだ。(p144)