城=カステロフィリア

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『城=カステロフィリア』
 澁澤龍彦著 金子國義画 白水社 1988

閉じこもることによって力を擬集する、―これがおそらく、城というものの本質的な機能ではないかと私には思われる。城の内部に我が身を限定するのは、一見したところ、その欲望の範囲をせまく限ることのようにも思われるだろう。しかしながら、城というミクロコスモスの内側には、かえって擬集された無限の欲望を感じさせるものがあるらしいのだ。外から眺めれば、一つの巨大なモニュメント、権力誇示のための空っぽな建築空間にすぎない城が、その内部に、渦巻くようにエネルギーを吸収する装置を備えているのでもあるかのごとくである。密閉されたまま無限に膨脹してゆくように見える、あのピラネージの牢獄の巨大な内部空間を私たちは思い出せばよいかもしれない。(p155-6)