家庭に於ける實際的看護の祕訣

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『家庭に於ける實際的看護の祕訣』
 築田多吉 南江堂書店 大正14

私は巻頭記載の御縁に依り主婦の御方に讀んで頂くのを目的に此書を作りました、どなたにも御解り易い様に相當苦心を經たのであります、若し新聞や雜誌を御讀になる傍ら御通讀くださいまして幾分でも御家庭の御為になるものがあれば本望であります。私は自己の立場として知つて居るだけの事を、間違ひの起らない様に用心して書いたのであります、先年海軍部内に限り出しまして、多大の好評を戴きました「部下より見たる部下統御」は、あれは海軍の精神教育を裏棚の方から見た一の批判で、實は職掌外の戯ら書きに過ぎないのでありますが、此本は私が過去の三十五年間病院生活が教へて呉れた、乏しき實驗上の證品でありまして、專門に屬する智識としては私の頭の全内容であります、乍併淺薄なる私共が實地の方面から見た御話でありますから、不備の點も多からうと思ひます、何卒御叱正を願ひます。(p557)