人間人形時代

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『人間人形時代』
 稲垣足穂 工作舎  1975


にしても、宇宙は、原始状態の半径の一・五倍だったときから現在にいたるまで、百億年以上は踏めないとする。その百億年前、直径無限小であったわが宇宙は原爆発を起した。時間と空間がそこに飛び出して、原子、各星雲、銀河系が出現し、以来膨脹と呼ぶもおろかな一大爆発の過程におかれている。螢どもは自身呑気なつもりでいても、百億匹ひとからげに、他の千億箇の螢籠もろとも物凄い加速度でふっ飛ばされている。(p253)