ルイ・アルチュセール

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 『ルイ・アルチュセール―行方不明者の哲学
 市田良彦 岩波書店 2018


 そもそも、テキストを読むなかで預言者同様に「神の背中」を見た、と主張するばかりか、「実体」の振舞いをまねて「個体」になろうとする、それを固有の「政治」にする、とは狂気の沙汰でなくてなんだろうか。『狂気の歴史』に裏打ちされて、『神学政治論』は「歴史」書になる。スピノザの『資本論』になる。スピノザが「錯乱」を持ち出して踏みとどまった一歩を、アルチュセールはフーコーに背中を押されて踏み出したにちがいない。「私」の求める「政治」には、こちらの道が通じている……。(p217)