やきもち焼きの土器つくり

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『やきもち焼きの土器つくり』
 クロード・レヴィ=ストロース 渡辺公三訳 みすず書房 1990


 神話は、連立方程式のようにも見える。ただその未知数は、けっして明晰に解かれることなく、伏在する方程式が解けるかもしれないという幻想を与えるように選ばれた具体的な値を用いて、近似されるだけである。その選択は、無意識の合目的性によって導かれるとはいえ、選択の対象となるのは恣意的かつ偶然的な歴史の遺産のみであり、そのため出発点において何が選ばれるかということは、ひとつの言語を構成する音素がどう選ばれるかということと同様、説明不可能である。そればかりでなく、環境、歴史、文化の提示する諸コードから何が選ばれるかは、ある神話もしくは、ある特定の神話群がみずから解こうとする設問との関わりのなかで決まる。どのようなコードでも、いかなる場所でもかまわず用いられると思ってはならない。(p242)