本郷隆・詩の世界

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 『本郷隆・詩の世界』
  草野心平・岡本喬編 湯川書房 1980


ヘラクレイトスは最初の一語をもって読者を瞠目させた。しかし彼は故意に不明瞭に書き、巫女の「しるし」をまね、狂人をまねた。ある単語が前後どちらにかかるのかわからない個所を故意につくった。彼は人間の明瞭というものに抵抗する義務を自らに課した。つまり彼は、人間のものではないロゴスを細心にまねた。確実に何事かを書き終えたとき、確実に何事をも書いていないという結果になっていることを切願した。(p97)