土星の徴しの下に

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『土星の徴しの下に』
  スーザン・ソンタグ 富山太佳夫訳 晶文社 1982


ベンヤミンはつねに動きつづける放浪者であり、ものを―つまり、さまざまの情念を―かかえた蒐集家でもあった。小さくするとは隠すことである。寓意画、アナグラム、筆跡など解読を必要とするものにひかれた彼は、極小のものにもひかれた。小さくするとは無用にすることである。グロテスクなまでに縮小されたものは、ある意味では、意味から解放される―そして小さいこと自体が目につく特徴となる。それは全体である(つまり、完全である)とともに、断片ともなる(小さすぎて寸法があわない)。それは客観的な観想あるいは瞑想の対象となる。(p140)