政治思想論集

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『政治思想論集 付 カール・シュミット論
 カール・シュミット 服部平治・宮本盛太郎訳 社会思想社 1974

直接の権力が権力者個人に集中すればするほど、権力者自身はますます孤立して行くのです。通廊は権力者を大地から切り離して、言ってみれば成層圏の内へと浮上させるのですが、そこでは、権力者の手は自己を間接的に統御する人々にだけかろうじて届くだけでして、自己が権力をふるうその他のすべての人々の所にはもはや届かず、その被支配者の方の手も権力者の所には届かないのです。極端な場合には、そういった事態はしばしばグロテスクな程露骨になります。ですが、その際、こういったことは、不可避的な権力装置によって、権力者の孤立化が徹底的にその論理の帰結にまで達したものにすぎないのです。この同じ内的論理は、日常生活の無数の萌芽状態におきまして、直接の権力と間接の影響力との絶えざる転変の内に貫徹されているのです。いかなる人間の権力といえども、この自己主張と自己疎外との弁証法からのがれることはできないのです。(p107-8)