ドレーフュス事件

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『ドレーフュス事件―政治体験から文学創造への道程
 渡辺一民 筑摩書房 1972


それにしても、事件のために闘い傷つき失意のうちに去っていったおびただしい《知識人》のその後の運命に思いをいたすとき、新しい芸術完成のために費やされた犠牲の大きさに、わたしはあらためて胸をふさがれずにはいられない。『失われた時を求めて』をはじめとする一九一三年の文学作品の創造には、膨大な青春のエネルギーを食いつくした、一八九八年にはじまるドレーフュス事件とよばれるあの危機の時代が必要とされたのだった。そして今日そのドレーフュス事件からわれわれの手に残されているのは、まさしくそうした芸術作品だけなのである。(p349-50)