スピノザ哲学考究

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『スピノザ哲学考究―普遍数学の樹立と哲学の終焉
 今野健 東銀座出版社 1994

ゲーデルの完全性定理によれば、任意の無矛盾な理論は(集合を表現する)モデルを有するから、これらはその大きさはともあれ全てなんらかの”集合論”であるとみなされうる。ゆえに、公理的集合論(選択公理を含むZFC集合論、等)は、無矛盾的な諸理論の総和という意味で極大理論である。他方、”哲学”とは世界に関する抽象的一般論にすぎないものとすれば、公理的集合論こそ諸理論(哲学)を包括する唯一の極大理論(哲学)であるということになる。そして、以下に見るようにスピノザ哲学は集合論そのものに他ならないのであり、しかもこれによっていわゆる”哲学の伝統的難問”(心身問題、時空間論、主観性論、超限(無限)問題、世界の究極的存在根拠の問題、等々)の多くが超論理学的問題に変換されて容易に解決され、ここに哲学ないし形而上学一般の終息が宣言されうるものとなるのである。(p13-4)