アルトー

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『アルトー―思考と身体
 宇野邦一 白水社 1997


アルトーの中には、初めから「無限」を模索する強い衝動があるが、その「無限」は形而上学や宗教の無限である前に、肉体と言語をめぐる実に具体的な知覚の中で問われている。無限は彼方にあるものではなく、すぐそこに、心身が生き、震え、病み、踊る場所に成立すべき状態である。アルトーはさしあたって、みずからが書きしるす言語について、その音節について問いながら、どこまでも具体性において問われるべき〈無限〉についての問いにもどっていく。アルトーの無限とは決して超越的な無限ではなく、あくまで内在的な無限なのだ。(p219-220)