サミュエル・ベケット証言録

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『サミュエル・ベケット証言録』
 ジェイムズ&エリザベス・ノウルソン編著
 田尻芳樹・川島健訳 白水社 2008


ベケットは自分の作品には「何の反抗もない」と言った。さらに確かめると、初期の詩には少しの反抗があったと認めたが、それは表面的だったと言った。「完全な服従」という言葉を使い、自分は「反抗されているけれども反抗しているのではない」と述べた。「反抗」という言葉を能動的な反対ではなく、何かから逸れていくという語源的な意味で彼は使っていた。彼は個人を破壊の一形式の対象と見ており、能動的というより受動的な存在と考えている。(p163)