インド ミニアチュール幻想

iy

『インド ミニアチュール幻想』
 山田和 平凡社 1996


では、壁を見出して人類はどうしたか。壁への衝動は抗い難く、人類は洞窟の壁画では飽き足らず、そのための壁をつくりはじめる。風雨からそれらを守るために屋根をつけ、埋めつくすべき壁がなくなるとさらに新しい壁をこしらえる。こうやって、ユーラシア大陸の全域にわたり、絵画で埋めつくすための屋根つきの壁がつくられた。寺院や教会と呼んでいるものがそれである。そして、壁のつぎに、人類は何を発見したか。それこそ「小さな絵」であった。「壁」という無限大の空間の対極に、人類はつぎのマティエールを見出すのである。無限大から無限小へ。あるいは無限定から極限的限定へ。それはまさにコペルニクス的転回だった。(p390)