南方熊楠 珍事評論

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 『南方熊楠 珍事評論』
 長谷川興蔵・武内善信校定 平凡社 1995

    社告
 本紙は博識多才を以て Plinius Japonicus 又 Literarum Miraculum の名あり、其上侠気充盈して常に弱きを助け強きをとりひしぐ男の中の男一ッ疋二代目新門辰五郎が著作に係り、学校の課業を怠りてだに読まねばならぬと云ふほどの面黒い新聞紙なり。されば看客常に肩に倚て早く次号を出せ、おれも見たい、われも見たいと望まるゝ段、作者の喜悦之に過ず候。付ては弥よ此事業に出精致し常に諸君の臍をして動いて静かなること能はざらしむるやうに仕るべく候間、諸君も亦其愚哀を慇み、些少の件なりとて放擲せず、何事たりとも御通報有んことを乞ふ。又少々予め法螺を御雑え被下候はゞ作者の世話少なく候間、甚だ都合宜しく候。さりとて又全く無きことを御通知など相成ては記者甚だ困り入るべく候。何分右宜しく御含みの上御通知御信切に奉顧候。
                         記者 謹白 (p82)