〈中性〉について

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 『〈中性〉について―コレージュ・ド・フランス講義 1977‐1978年度
 ロラン・バルト講義集成2 塚本昌則訳 筑摩書房 2006

 一般的に、欲望はいつでも売ることができる。わたしたちはさまざまな欲望を売り、買い、交換してばかりいる。[売れないもの]〈中性〉への欲望がもつパラドックス、その絶対的な特異性は、まさしくそれが売ることのできないものだということだ→ひとは私に言うだろう。「この〈中性〉に関する講義で一冊の本をお作りになるのですか?」 まったく別の問題を除外しても(とりわけ能力の問題)、わたしは「いいえ、〈中性〉とは売ることができないものなのです」と答える。そしてわたしは次のブロワの言葉のことを考える。「見えないものしか、そしてとりわけ買えないものしか、完璧に美しいものはない。」→「見えないもの」? わたしなら「手に負えないもの」と言うだろう→手に負えないものに関して、十三週間持ちこたえなければならない。そして、それは消滅するだろう。(p29-30)