闘争の思考

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 『闘争の思考』
 市田良彦 平凡社 1993


何ももちあわせていない、と正直に認めるところから始めるべきではないのか。「スターリン時代」の分析すら回避して自壊してしまった「共産主義」は、今や何に対する返答にも当面はなりえないと認めることからしか、唯物論は始まらないだろう。何も前提は置かない、つまり無から始めることが唯物論だったのだから。この貧しさに耐えることのできない「処方箋」は、すべて現実の戦争に凌駕され、「神話」に乗っ取られるだろう。唯物論に、撤退可能な安全地帯は存在しないが、何ももちあわせていないかぎり、搾取されることもまたありえない。(p386-7)