マノエル・デ・オリヴェイラと現代ポルトガル映画

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『マノエル・デ・オリヴェイラと現代ポルトガル映画』
 遠山純生編 エスクァイアマガジンジャパン 2003

わたしたちの誰もがさまざまな影響と選択の総和として成り立っているのは明白だろう。とはいえ公正さがないわけでなく、その公平さゆえに、わたしたちは他人の意見を尊重し、それを受けいれたり、自分の意見と対決させたりするようになるのである。わたしたちが海を見るとき、上のほうを見るか、下のほうを見るかによって、教会か学校、あるいは空か地面が眼に入るのと同じようにして、その海を見る。それが客観性と呼ばれるものだ。自分の作品で描く主題を前にしたとき、監督はこうした客観性に基づく態度をとり、可能なかぎり、自己の信条とは切り離して主題を分析しなければならない。人生はあるがままにあり、芸術もそのあるがままにあるものから逃れることはできない。芸術は防御でも攻撃でも宣伝でもない。(p201)