野生のアノマリー

yn

『野生のアノマリー―スピノザにおける力能と権力
 アントニオ・ネグリ 杉村晶昭・信友建志訳 作品社 2008

スピノザの思想は、かれの時代にあって異形であった。そのことが野生の異形を形成する。なぜ野生かと言えば、それは限界を知らぬ無限の寛容さから生じたさまざまな肯定の強度と多様性へと、スピノザの思想が分節化されていったからである。スピノザのもとには、無限の存在の快楽がある。それを世界の快楽と言ってもいい。世界のパラドクス、そしてそのなかに開かれた、実無限と規定の無限性とのあいだの緊張関係、それは活動性として展開し、構成過程のなかで認識される。こうして世界の快楽は中心的となり、異形性は野生的なものとなる。なぜ野生的かと言えば、それは存在の尽きせぬ多様性と、広大かつ活動的な肥沃さと結ばれているからである。スピノザの言う存在とは野生であり、その表現は繊細かつ多様である。それは変移的であり、野生的である。スピノザの存在論のなかには、つねに新たなものがある。(p479)