近代哲学研究序説

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 『近代哲学研究序説』
 工藤喜作 八千代出版 1980


 それぞれの哲学者はその立場からスピノザ哲学を克服したと考えているかも知れない。だがスピノザの眼から見れば、少しも克服されていないのではなかろうか。むしろそれぞれの哲学は、彼にとっては自分の哲学のModusでありAffectioであるか、それとも彼においていまだ萌芽であったものを開花させたにすぎないか、あるいはまったく立場を異にしているため、彼に痛痒を与えるような批判はなかったかのどちらかであろう。換言すれば、スピノザの「永遠の相のもと」から見れば、哲学の歴史というべきものはなく、いわば永遠の哲学の変種というべきものが時間的な縦の系列の中で並べられているにすぎないと感じられるのではなかろうか。(ⅰ-ⅱ)

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