評伝 アレクサンドル・コジェーブ

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評伝 アレクサンドル・コジェーブ―哲学、国家、歴史の終焉
 ドミニック・オフレ 今野雅方訳 パピルス 2001


コジェーヴが自己の思想を秘め、内奥を明かさぬまま「政治」に参画していたとすれば、それは彼が歴史を決定的に終焉したものと見なしていたからである。本書ではこの理論を生成から意味の移行にいたるまで段階を踏んで再建しなければならなかった。この理論があったため、コジェーヴを動かしていた動機それ自体には経済政策にたずさわるよう彼を促すものは何一つなかったと推測される。歴史を終焉したものと見るとき、もはや実現すべきものも復興すべきものも皆無とならざるを得ず、したがって所与の世界に最終的に「自己の思想を合わせる」ことなどは意味をうしなっていたと考えられるからである。(p16)