言語はなぜ哲学の問題になるのか

ti

『言語はなぜ哲学の問題になるのか』
 イアン・ハッキング 伊藤邦武訳 勁草書房 1989


 スピノザにとっては観念の世界が自律的であるのに対して、ポパーは同様の自律性を文の世界に与えるのである。私の意見では、ポパーの探究は、私がこの本で描写してきた諸理論の多くよりもより大きな重要性をもっている。私が彼についてほとんど何も語らなかった理由は、一つには、彼の理論が、観念の全盛期と文の全盛期との間に横たわるあの困惑すべき断絶と、あまりにも深く結びついているからである。その溝は、時としてスピノザと比較されることもあるところの、もう一人の哲学者によっても銘記されている。すなわち、ヘーゲル。(p286-7)