色と空のあわいで

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『色と空のあわいで―往復書簡集
 古井由吉・松浦寿輝 講談社 2007


古井 攻めてくるのは外部と思っている。だから外部に対するセキュリティばかりやって、内部にある破壊力に対するセキュリティがない。破壊といったって、爆弾を仕掛けるようなことばかりでなくて、平たくならして抽象化してしまって個々の感覚を奪ってしまう、そういう破壊もある。
松浦 いま、お上がものすごく強くなっていると思うんです。民主主義とか公衆衛生とか治安といった錦の御旗を掲げているから、抑圧を抑圧と感じさせない形でね。そういうソフトな全体主義の手法の洗練というのは大したものです。(p168)