終末から 1

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『終末から 1―特集:破滅学入門
 構成 野坂昭如 筑摩書房 1973

ぼくなんかは破滅芸人としてお金をいただいているだけに、いろいろ悪い情報が入って来ますね。負け戦のときに、昔から一番早くノイローゼになったり自殺したりするのは通信士なんですね。通信士というのは情報がみんな自分のところに入ってくるでしょう。機械的に、やれどこそこの海戦で何隻沈没したとか、わが軍がどこかでもって全滅したとかいう数字がみんな入ってくるから、大体通信士というのはノイローゼになる。ぼくなんかも幾らか同じような立場にいるわけですよね。誰だってあっちこっちへ行って、到るところで悲観的なことを教えられるとあほらしくなってくる。戦後ぼくらが生きてきたことが結局こんなものをもたらしてしまったという感じがするものだから、そうすると焼け跡へ帰りたい、あそこからもう一ぺんやり直せるものならというふうに、全く返らぬ繰り言を思いめぐらせて、もともとそういった状態を望む気持ちが強いから、なおさらぼくは一種のパニック状態についての情報だけは普通の人よりは敏感になる。(p29)