加藤泰の映画世界

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『加藤泰の映画世界』
 『加藤泰の映画世界』刊行会編 北冬書房 昭和61

少くとも、僕の待望したい世の中は、対立する意見が互いのゴリ押しで争はれたり、相手を納得させる議論も伝はらぬ内に、権謀術数で相手を捩ぢ伏せ、止むを得ずそうしたのは相手がこうだからと唱へて憚からず、自分以外の何かの為であると正当化して憚からぬやり方が罷り通る世の中ではありません。まして意見や立場の相容れぬ相手を暴力で叩き伏せ、そうしたのは相手が先にそうするかも知れぬからとか、将来そう言う事が無い様にする為であるとかとの強弁が罷り通る世の中でもありません。落語の枕ではないけれど、世の中には十人寄れば気は十色、顔が違う様に皆違うものであるという事を互いに認め合い、分りあった上で物事が極められ、行はれ、人の命と幸せが一番大切に扱はれる様な所であって欲しい。僕はそう願いつづけて止みません。(p82)