精神の眼は論証そのもの

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『精神の眼は論証そのもの―デカルト、ホッブズ、スピノザ
  上野修 学樹書院 1999

「相互に何らの連結も持たない」ような「無数の精神」をもち、無数の知られざる「客体」をおのが身体とするところの「同じ一つのもの」、つまりは無数に異なる同じもの、それがこの私なのである。だから私が無数にある属性のうち思惟と延長しか認識しないとしても不思議はない。いま私の知っているこの精神は無数に反復される観念のうち延長の一様態とその観念だけを客体とするものであって、それ以外の私の無数の精神とはなんらの連結も持たないのだから。(p208)

スピノザの「壮麗かつ賛美すべき」自然の中では、われわれの一人ひとりは神がそうであるように無数に異なる同じもの、一切の表象的同一性を逃れる無限反復なのである。(p209)