フロイトのイタリア

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『フロイトのイタリア―旅・芸術・精神分析
 岡田温司 平凡社 2008

精神分析はイタリアで生まれた、とまで言い切るのはさすがにかなり勇気がいるとしても、両者のあいだには、いくら強調してもしすぎにはならないほどに親密にして、どこか因縁めいた関係がある。だが、このことは少なくともわが国では、これまでほとんど論じられてはこなかったように思われる。フロイトの思想および精神分析の理論の形成に、実は、彼のイタリア旅行と、この国の芸術や文化が深くかかわっていたのである。本書が、「フロイトイタリア」ではなくて、「フロイトイタリア」と題されている理由もそこにある。つまり、並列関係を示す便利(だが曖昧)な並立助詞「と」では埒が明かず、所有や所属を示す格助詞「の」のほうがぴったりとくるような内在的な関係性が、両者のあいだにははっきりと存在するのである。(p5)