社会の新たな哲学

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『社会の新たな哲学―集合体、潜在性、創発
 マヌエル・デランダ 篠原雅武訳 人文書院 2015


 創発する全体は、それを構成する部分を拘束してそしてその支えとなるべく反作用するという事実があるからといって、それが隙間のない全体性へと帰結することはない。各々の規模の階層には相対的な自律性が保たれており、したがって分析においては真っ当な単位であるといえるかもしれない。各々の規模の存在論的な独立性を保持するならば、ミクロな還元論やマクロな還元論の試みが成り立たなくなるというだけでなく、さまざまな社会科学者が特定の時空間的な規模で―アーヴィング・ゴフマンが研究した、小さな実体のきわめて短期的な存続から、フェルナン・ブローデルが研究した、大きな実体のきわめて長期的な存続にいたるまで―発展させた有益な洞察の統合が可能になる。(p218)