省察

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『省察』
 ヘルダーリン 武田竜弥訳 論創社 2003

悲劇の意味は、パラドックスから理解するのが最も容易である。なぜなら、あらゆる能力は公正かつ平等に分け与えられているので、根源的なものはすべて根源の強さにおいてではなく、つまり現実的にではなく、本来その弱さにおいてのみ現れ、まさに生命の光や現象は、各々の全体の弱さのものだからである。さて、悲劇的なものにおいては、記号それ自体は無意味であり、いかなる効果も持たないが、根源的なものがまさしく表出されている。というのも、本来、根源的なものはその弱さにおいてしか現れることができないが、記号それ自体が無意味なもの=0として定立されるかぎりは、根源的なもの、各々の自然の隠された基底もまた、描出されうるからである。自然は本来、その力の最も弱いところにおいて描出されるものである。だとするなら、自然がその力の最も強いところにおいて描出されるときには、記号=0なのである。(p156)