旅人たちのパミール

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『旅人たちのパミール
 ―玄奘、マルコ・ポーロはどの道を通ったか
 酒井敏明  春風社 2000

 本書の内容は大きく二部に分かれる。四年前に書いた「旅人たちのパミール」は古代から中世までのあいだにパミールを歩いた大旅行家たちの足跡を辿るものである。とりわけ、玄奘やマルコ・ポーロの旅は中国とヨーロッパ世界に「世界の屋根パミール」と中央アジアについて大きな知見をもたらした。もと、修士論文として京都大学大学院に提出したものの一部を基礎として、大幅に書き改めて勤務先の紀要に掲載してもらったものである。昨年発表した「パミール山中の要衝タシュクルガン」は、現在中国新疆自治区内の少数民族タジク族の自治県の主邑となっているこの辺境の町を取り上げている。後半は、日本人のヒマラヤ体験とでもいえる内容である。「ヒマラヤを越えた日本人」は、明治以降第二次大戦までの間、具体的には二十世紀前半の時期にヒマラヤとカラコルムの山地に接近し、その主稜線上の峠を越した日本人を扱い、これら先人たちの旅の姿を描こうとしたものである。(ⅳ)