労働社会の終焉

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『労働社会の終焉―経済学に挑む政治哲学
 ドミニク・メーダ 法政大学出版局 2000


 マルクスが夢見た社会とわれわれの社会との唯一の違いは、われわれが交換の商品的性格をもち続けていることにあるが、だからといってそのことでわれわれの社会は完全に自律共生的で人を開花させるものになることができないわけではない、と考えられている。われわれの社会はマルクスと同じように、人間の表現の最高形態は労働であり、すべての活動は労働になるように要請されている、と信じている。まさにここに、人間がこの二世紀の間世界の価値を高めてきたやり方である歴史的に規定された様式とドイツ人が文化と呼んできたものとを、マルクスと同様に混同している諸思想について批判しようという、本書の決意がある。(p290)