思想史の名脇役たち

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『思想史の名脇役たち―知られざる知識人群像
 合田正人 河出書房新社 2014


ジジェクが言うのとはちがって、「対象a」において問われているのは、「個物」は神の属性を一定の仕方で表出するという優れてスピノザ的な事態であり、また、「個体はまたきわめて複雑な複合物である」という『エチカ』の命題(第二部定理一三要請一)ではなかったか。それだけではない。生命とは腐敗である、とラカンは言っているが、そのとき彼は、「自然におけるあれほど多くの不完全性は一体どこから生じたのか。悪臭を発するにいたるまでの物の腐敗、嘔吐をもよおさせるような物の醜怪、混乱、害悪、罪過などはどうか」(『エチカ』第一部付録)という問いに思いを馳せていたのではないだろうか。「対象a」を屑とみなすそのような「表象」の仕方こそが問題なのである。そして、この屑のようなものが、「様態」である限りでの「個体」なのである。(p283)