哲学においてマルクス主義者であること

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『哲学においてマルクス主義者であること』
 ルイ・アルチュセール 市田良彦訳 航思社 2016


 ほんとうのところ、中立的哲学者などいないのである。たとえ自分でそうだと信じていようと、たとえ哲学的治外法権地帯を自分で作って、自由に両替したり勝手に免税措置を施したりして、あたかも争いごとのそとにいるかのような、疲れた兵士や追われる兵士に自分の領土を安全地帯として提供するかのようなふうを装っても、哲学者は中立ではない。哲学の戦場においては、多様な戦士がどんな名前で分類されようと、その名前(経験論、唯名論、実在論、感覚主義、等々)は闘いの帰趨次第で客観的な意味を変えうる。この戦場では中立など可能ではないのだ。あらゆる哲学者が、直接的ないし間接的に、自白があろうとなかろうと、観念論陣営か唯物論陣営に属している。(p228)