中井久夫との対話

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 『中井久夫との対話―生命、こころ、世界
 村澤真保呂・村澤和多里 河出書房新社 2018

―中井さんはラカンについてどう思っているんですか?
中井 私はラカンとあまり関係がないと思われているようだけれど、ちょうどラカンが日本で翻訳されようとしているとき、私にも話が来たんだよ。私はラカンが翻訳される前に原文で読んでいたんだけれど、どうもね。
―というと?
中井 読んでいると、書き手がどういう人間なのか目の前に浮かぶんだよ。ラカンのばあい、私の印象では、机の前に座って、患者を実験動物のように見下ろしているイメージが強く浮かんだんだけれど。シャルコーとはちょっと違うけれどね。いずれにせよ私の思う治療者とは、かけ離れたところがあるね。ラカンの書いたものは議論としては面白いところもあるんだけれど、それ以上の関心は覚えなかった。(p34)