三文役者 あなあきい伝 PARTⅡ

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『三文役者 あなあきい伝 PARTⅡ』
 殿山泰司 講談社文庫 昭和55

おれが大船在籍の期間には、わが敬愛する川島監督は、「深夜の市長」「追跡者」「オオ!! 市民諸君」「シミキンのスポーツ王」の作品を残している。「深夜の市長」は今は亡き月形龍之介さんが、大船へ特別出演した映画で、おれは、これには出なかったような気がする。あとの三本の映画には全部、おれは出たような気がする。「追跡者」には確実に出た。自分の出演した映画ぐらい、おぼえてるもんだろう、と、ミナサマは思われるかもしれないが、これが古いボロボロの布地の如くに、忘れているものですね。おまけにおれは、過去は振り捨てる主義だから、自分でやった仕事の台本もスチール一枚も、保存しておかないのだ。みんなどんどん捨ててしまう。すんでしまった仕事のことを、うだうだ言っても始まらねえよなカツドウ役者が。反省だったら、オノレの頭の中で、ヒトリで対話をすればいい。ちがいますかね?(p53-4)