ロゴスとレンマ

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『ロゴスとレンマ』
 山内得立 岩波書店 1974

例えば西欧の文化がロゴス的であるに対し東洋のそれはパトス的であると言われるのはロゴスとパトスとが共に人間精神の一要素として互に相依って全体をなすからであろう。それは殆ど常識的な区別であって別にとり立てて言うほどのことでもないが、我々は論理的にこれをロゴスとレンマとの区別として取扱ってみようとするのである。西洋文化はロゴスの体系であるに対し東洋の文化はレンマの方法による。ロゴスは発展して論理となったが、レンマもまた一つの論理性を展開する。それが如何なる論理であるかを明らかにすると共に、東西の区別をこの点におかんとするのが本書の目的とする所であった。但しレンマにも二種あり、一はテトラ・レンマとしてインド大乗仏教の論理をなし、他はディレンマとして中国の老荘思想の論理を形成している。東洋思想をレンマの論理として把握し、アリストテレスからヘーゲルに到る雄大なる思想をロゴスの体系として対比せしめようとするのが本書の主旨とするところであるが、それは要するに一つの試行であり実験であるに外ならなかったのである。(ⅵ-ⅶ)